2005年11月26日

漫画家:こうの史代

kouno1kouno2こうの史代さん、同人から出てきた作家さんです。実は今までこの方の存在を知らなかった。会社の同僚が、「ちょっといい本があるよ。」と貸してくれたのが、初めての出会いでした。最初に読んだのが「夕凪の街」:最初に言っておくが、1冊800円、トータル103Pの本です。この本は後世に残る傑作です。今すぐ買いなさい!そしてじっくり時間をかけて読みなさい。そうして日本人として泣きなさい!これは「ヒロシマ」を舞台とした戦争の話です。傑作であるがゆえ、おいそれと感想めいたものを書くわけにはいかないので、さわりだけ紹介。広島がなぜ「ヒロシマ」というカタカナ表記かというと、そう、終戦から10年後の広島での話だからです。原爆投下から10年後の広島では、被爆した街はそれなりに復興し、人々の生活も平常に戻りつつある中、被爆した人の心の中には、表には出てこない深いところでの傷は癒えていない。そういう中での何気ない生活の断片を、二十三歳の皆実(みなみ)を通して語られる。あの戦争で、特に原爆によって一瞬にして家族を知人を失い、またその後、原爆症で大切な人を失っていく様を静かに普通の生活の中の情景として描いています。戦争の具体的な表現は一切行わずとも、これほどに戦争がもたらす悲劇を表現できるとは、、、会社でぱらぱらと読んだのですが、自宅で一人静かに読んでいたら間違いなく泣いたぞ。これは。

本の帯に手塚治虫文化省受賞・文化庁メディア芸術祭大賞受賞とある。あわせて「映画化決定!」ともある、二つの受賞は喜ばしい事だが、映画化はいけない。現在の邦画界の監督にこの話をまともに映像化できる監督は一人もいないはずだ。陳腐なお涙頂戴映画か、下手すると恋愛物崩れの連ドラレベルの物になってしまう。ここは日本が誇るアニメショーン技術の全てをつぎ込み、こうの史代さん独特のテイストを忠実に再現した方が良いと思う。そうでなければこのまま漫画として読まれる事を切に願う。なんでも映画にすれば良い訳はなく、作家の考えた展開やコマ割やカット、これは本でしか味わえない。ぜひ、一読されることをお勧めする。これは日本人らしい原爆への向かい方を正しく表現していると思う。映画化なんかより、これを英訳・仏訳・独訳して世界に向けて出版すべきですね。映画を作る資金があれば是非そうしてほしい。
こうの史代さんはトーンをまったく使わない画法で、全て手書き。この世界が気にいたので、合わせて「長い道」という本も購入したが、こちらはほのぼのとした夫婦の日常が描かれている。ほのぼのとは言っても、甲斐性無し男:荘介の所に、ある日突然、親同士の話で決まったからと、嫁さんが押しかけてくる。ここから始まる奇妙な夫婦生活。こんな都合の良い話は無いよ、、、ではなくて、この二人の底に流れる生活の機微を感じ取って欲しい。個人的には夕凪の街より、こちらの「長い道」の方が好み。

「長い道」の感想としては、こちらに僕の気持ちを代弁してくれている方がいらっしゃいましたので、ご紹介いたします。
http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/nagaimichi.html