iamlegend5/28 映画レビュー
「I AM LEGEND」★☆☆☆☆

リチャード・マシスン著「吸血鬼」が原作。
邦題は「地球最後の男」
映画化はこれで3回目だそうです。

率直な感想を言うと、
「設定に凝ったゾンビ映画」

以下ネタバレ注意



遺伝子操作され治療薬として開発されたウィルスが、人間を死に至らしめる性質に突然変異を遂げて、空気感染により驚異的な速度で地球全域に蔓延した。
人類がほぼ全滅して3年が経過しゴーストタウンとなったニューヨークが舞台。
ロバート・ネビル(ウィル・スミス)は、全世界の人々が絶滅した中でたった一人の生存者となった。米軍で高い地位につき、科学者でもあったネビルは、人類生き残りをかけてウィルスの研究を続けた。彼にはこのウィルスに免疫があり感染しない体質を持っていた。

ゴーストタウンと化したニューヨークの風景の描き方を見たかった。
これがこの映画を見るきっかけです。
実の所、リチャード・マシスン著「吸血鬼」を原作とするリバイバル物なんて事は全く知らずに見ました。原作との比較部分は見終わった後で知りえた情報です。

冒頭では、乗り捨てられた車で埋め尽くされたストリート、崩れ落ちた橋、雑草が生い茂り野原のような広場が丁寧に描写され、全ての活動が止まり荒れ果てた街の雰囲気が良く出ています。
おおっこの廃墟感たっぷりの出だしは結構良い感じ。
ニューヨークを舞台にこの演出は結構難しいのに、良く頑張ってるな〜と。

音の消え去ったビルの谷間に、V6〜8気筒でキャブ仕様のエンジン音が響き渡る。
真っ赤なフォード・マスタング突然現れて、荒廃した摩天楼の間を走り抜ける。
運転しているのはもちろんロバート・ネビル(ウィル・スミス)で助手席にシェパードが一匹座っている。そのマスタングの前を鹿が群れで逃げていて、それを必死で追っている。見るからに「狩り」のシーンで始まる。
まぁ狩りには失敗し、自宅に戻って質素な食事をしたりして、この人の消え去った世界でどう生きているかが紹介される。
電気は自家発電か太陽電池のようで、家の中にバッテリーがいくつも設置してあり、照明からTV、電子レンジまで普通の生活が維持できている。構成に破綻は無い。

しかし、先のウィルスに生物は皆やられたはずなのに、動物は影響されなかったのか?とちょっと疑問。あの鹿は?この犬は?
で、まぁ思わせぶりな行動をしながら淡々と日常を描いていく訳です。
思わせぶりな行動:日暮れに非常に神経を使っていて、日が落ちると鉄板の鎧戸を閉めて要塞のように防御を固める。家に入る前に道路から、家のエントランスに水を撒きながら入ったり。明らかに何かに対して用心をしているような振る舞い。

ある日、一頭の鹿を追って廃屋の中にシェパードが走りこんでいった。
ウィル・スミスは声を張り上げて「入るな!暗い所に行くな〜!」と犬を引き止めるが鹿を追った犬は建物の中に。
ウィル・スミスは銃を構えてそろりそろりと中に入り犬を探す。
なんで、そこまで警戒するのだ?何かいるのか?と思わせる展開。
床に血の跡が引きずられて奥へと続いている。犬の血なのか?
M16に取り付けてあるライトを頼りに奥に進むと、鹿が一頭うつろな目を見開いて倒れている。よかった、犬ではなかった。犬はどこだ?この鹿は犬が仕留めたのか?
それにしても、ウィル・スミスの怖がりようが異常。と、ライトの先に人影が浮かんだ。上半身が裸の男達が4〜5人がこちらに背を向けて立っている!?
化け物に出会ったように、足音を殺しながら後ずさるウィル・スミス。
と、その男達が一斉に襲ってきた。
必死で逃げるスミス。
が、一人に組み付かれて倒されそうになった時に、窓を打ち破って外へと脱出。
明るい日の元に出たとたんに、絡み合っていた男は悲鳴を上げて死んでしまった。
まるで日を浴びた吸血鬼のように。その男は血管の浮き出た薄い皮膚をしていて、髪の毛もなく宇宙人のような雰囲気を持っていた。

ここで、謎説きが始まる。
例のウィルスは人類をことごとく駆逐したかのように思えたが、実はゾンビのように人間性を失い紫外線に極端に弱い皮膚を持つ夜行性の生物に変容させていたのだ。
夜になると戸締りを厳重にして引きこもる理由は、これらの怪物達が夜は街を跋扈しているからだった。な〜〜んだ、そういうことか。
で、この後、犬を失ったり、人間の生き残りにであったりで、最後はこのゾンビ達と壮絶な戦いを持ってスミスは死ぬ。しかし、このゾンビ達の凶暴性を治す血清の開発に成功し、それを生き残りに託した事で、彼は「伝説=レジェンド」と呼ばれる。

出だし1/3は良かったけど、後半で一気にC級映画になってしまった。
荒廃したニューヨークの描写など優れていただけに非常に残念でした。
これなら原作をきちんとトレースした方がプロットが良かった。
○=荒廃したニューヨークシーン
×=人間性と知性を失い凶暴化した生物になったと言う設定だが、妙に知恵を働かせた行動を取るゾンビ達。昼間は紫外線に弱い為に暗がりから出る事ができないとなっているが、罠を作ってスミスを捕らえるという知恵があれば、服を着ればよいし、瞳孔が開きっぱなしで昼間は目が見えないというならサングラス掛ければよいじゃん。この辺の設定は原作から変更して付け加えた所なので、脚本家の荒が目立ちます。下手糞〜
最後の戦いのシーンも破砕型手榴弾1個であれだけの大爆発は起こらない。
安易な結末を見せられて非常に不満。後半は流し見で十分です。

ちなみに原作は、、、最後の落し所が秀逸です。
(まだ読んでいないけど、粗筋を見る限り)