2008年09月28日

0928:キプール〜勝者なき戦場〜

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9/28 ビデオ屋でなぜか目に留まった1作

原題:KIPPUR
監督・脚本・製作総指揮:アモス・ギタイ
公開:2000年

1973年の第四次中東戦争での監督の体験を基に制作された映画。贖罪の日(ヨム・キプールの日)に戦争がはじまった為にヨム・キプール戦争と呼ばれている。
僕には第四次中東戦争=イスラエルとシリアが死闘を演じたゴラン高原の戦いの方がわかりやすい。
戦争が始まった10月6日は、ユダヤ教徒が神に祈りをささげながら罪を清める「贖罪(しょくざい)の日(ヨム・キプール)」に当たり、官公庁や学校、交通機関などすべての活動が止まる。信徒にとっては神聖なこの日に、シリアがゴラン高原、エジプトがシナイ半島へと、南北から奇襲攻撃を仕掛けた。この時イスラエルの軍や情報機関が、シリア、エジプト両国軍の展開を演習と見なし、戦争準備とは考えなかったことから、緒戦で大打撃を受けた。よって開戦当初のイスラエル軍は混乱をきたしており、統率が取れないまま戦闘に入っている。
その混乱振りが冒頭で描かれている。

粗筋は、主人公のワインローブは友人のルッソをつれて、基地へ向かうも、既に戦争が始まった中、部隊は既に出発した後だった。路頭に迷った彼らは偶然であった軍医と共に負傷兵を救出する職務にあたる。ヘリによる前線の負傷兵の救出を毎日行う中、その救護ヘリもシリアのミサイルを被弾して墜落してしまう。
ギタイ監督の実体験を元に作られたフィクションであるが、ドキュメンタリーと思える仕上がりとなっている。

ワンカメによる長回しが基本なので、ハリウッドの細かいカメラワークに慣れていると間の長さについていけないかもしれない。
しかし、当事者の目線で物事を語る上で非常に効果的だと思える。
説明臭いストーリーは無く、ただそこで起こっている事を無表情に映すだけの映画。
ジャンルで言えば「戦争映画」なのだが、ただの一発の銃弾も発射しない戦争映画だ。背景で戦車が動いているか、爆発するシーンが登場するだけで「敵」というものが具体的に表現される事はない。でも、毎日繰り返される負傷兵の惨状を見るだけで激しい戦いが行われている事は十分に伝わる。

DVDタイトルにフルメタルジャケットを超えた。と無責任なコピーが踊っていますが、はっきり言って、このコピーにはむかついた。

え〜素直な感想を言うと、戦闘シーンを期待すると大外れです。
ではヒューマンドラマがあるのか?ありません。
戦争という出来事に否応無く翻弄されて傷つく状況が映されているだけです。
万人にお勧めできる映画ではありません。

こういう手法の戦争映画に「84チャーリーモピック」という、ベトナム戦争映画があります。新兵教育の為に米国陸軍が実際の戦闘シーンを記録した映画を作ろうとして、カメラクルーを前線に送り込むという設定。(だったはず)カメラを通して戦争を語るという正にドキュメンタリータッチに徹底した作りでした。
説明的な映像は一切無いので、前触れも無く戦闘が始まり銃声が響く、カメラが慌てて伏せる。写っているのは目の前の草だけ。
誰かが叫んでいる。
近くで爆発が起こる。
それに応射する音。
どこで誰が戦っているのか全くわからない。
突如訪れる静寂。戦闘が終わったらしい。
カメラが立ち上がると、さっきまで笑って話していた兵士が腹部を撃たれてうめいている。救護兵が必死に手当てをしている。
ラストシーンはさらに壮絶。
一瞬の内に友を失うとはこういう事、
戦争とは無慈悲だと思い知る事になります。

キプールがカンヌで賞を取る映画だとしたら、僕はこの「チャリーモピック」の方が特別賞を獲得するに値する、素晴らしい内容だと思えるけどね。
こちらならお勧めします。
非DVDです。VHSだけだと思います。
どこかで見つけたら是非一見されてください。
↑誰に言ってんだ(@_@;)