12/10 天気/晴れ 気温/放射冷却で朝から冷え込んでいる。遠く秩父の山峰は冠雪していた。

百田尚樹
百田尚樹著書を2冊まとめて読んだ。
彼のデビュー作でもっとも評価の高い
「永遠の0」
ストーリーや感想は巷にあふれているので、率直な読後の感想のみを残しておく。
泣ける泣けると煽ってある。
確かにいくつか涙ぐむ所があったが、
それ以上に読んでいる間ずっと付きまとう、
ライトノベル感に違和感を持たざる得なかった。
はっきり言うと、百田尚樹の文章は「軽い」のだ。
読みやすいとは違う。確かに読みやすいとも言えるが、
心に残る表現が少なく、説明文章をずっと読まされている感じがする。
登場人物の内面に入ることもなく、
情景が延々とつづられていると感じた。
語られている情景を脳内変換して、おのずから悲しい情景を生み出して泣くのだ。
特攻隊員の出撃シーンや遺書、遺族の証言などさまざまなメディアを通じて知っている。
そういう予備知識を持って入れいるほど泣ける。
主人公である25歳の孫の精神的な成長も、その姉の結婚にまつわるエピソードも、
取って付けた様な話に感じてしまう。
特攻隊として散った祖父:宮部久蔵。
1枚の写真も残っていないため、彼を知るかつての戦友や知人を訪ね、
インタビューを重ねる。
その上で構築されていく祖父の姿。
彼らがその当時交わした会話やエピソードで、内面が掘り下げられていく様は、
読み進める上で引き込まれる様な魅力がある。
同時に太平洋戦争の流れを説明していく。
当時おかれていた戦局をしっかり理解することで、
飛行隊の持つ使命や心構えを知る事ができる。
しかしながら、あまりにも淡々としすぎていると感じた。

登場人物の中に、新聞記者で藤木という男を登場させる。
彼に、特攻隊員はテロリストだったと言わせる。
愛国精神に洗脳され殉教的な行動としてテロ行為である特攻を行った。
これは9.11のテロ行為と構造的にまったく同じだ。と、
世の中広いのでこういう考え方をする人間が一人ぐらい居てもおかしくないが、
認められない考えだ。
さらにその考えを記者がしていると言う設定に寒気がした。
ありえなくないからだ、この日本と言うボケた国では。
しかし、その後きちんと論破してくれているので救われた。

太平洋戦争を振り返る中で、陸軍海軍双方の無能な戦いぶりをさらしていく。
真珠湾でなぜ3次攻撃をせずに戻ったのか?
ミッドウェー海戦での敗北の原因など、
様々な軍令部の怠慢と思い上がり、そしてだれも責任を取らない指揮官。
これら多くの矛盾と人災と思える悲劇を並べていく。
読むうちに、今第3部が放映されている「坂之上の雲」で描かれている、
日清戦争での乃木大将の無能さとかぶってくる。
そして、今の日本の無能な政治家とその政治・国政も想起される。
日本と言う国は、戦争から何も学んでいないのだ。

この本は、特攻で散った宮部久蔵を借りて、政府の無責任振りを暴いているのだと思われる。
確かに泣ける、それは特攻していく姿ではなく、特攻という攻撃を考えて実施に至らしめた無責任な指導者達を持つ我々の姿に泣ける。
くれぐれも、泣き所を間違えないように。

「プリズム」
多重人格者のもつ一つの性格に恋してしまう人妻の話。
アイデアは良いが、昼のメロドラマの脚本程度。

百田尚樹はラノベライターなのか?